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新年度からはじめる組織改革/組織開発のアプローチ

  • 業種 病院・診療所・歯科
  • 種別 レポート

増加する病院の組織改革

ここ3〜4年の間で、組織づくりや人づくりに本格的に取り組む動きが広がっています。組織改革の方法は幅広く、これまでのマネジメントスタイルを根本的に見直すケースも増えています。これは、従来型の運営方法に限界を感じるトップが増えているためです。例えば、生産性の低下や人材の流出、ガバナンスの機能不全などです。なぜこうした課題が生じるのでしょうか?

病院組織に顕在化する課題とその要因

人口減少、VUCAワールド、DX化などの複雑性の高まる時代において、病院が直面する課題は多岐にわたります。業務量と難易度が飛躍的に増加している中、働く価値観の変化や多様性の重視が求められ、リーダー層には人材育成やチームへの関与など高度なスキルが要求されます。

このような時代の中で、階層別の責任分担や実績主義のマネジメントスタイルは、責任感の強い役職者や意欲的なスタッフにとっては有益ですが、自律的な発想や姿勢を持たない人や部署を取り残してしまいます。このようなアプローチは、「トップは現場のことを理解してくれない」「成果だけを追求して職員を大切にしない」といった組織やトップへの不満や批判を引き起こします。

現場では、リーダーや一部の職員に負担が集中し、やる気のある人とない人の対立が生まれ、部署間でもすれ違いが増加します。このような状況が進むと、「なぜ自分たちだけが頑張らなければならないのか」「他の部署は楽しているのではないか」といった不満が募り、組織内の連携が損なわれてしまいます。

職員が持つべきエネルギーが、患者サービスではなく、組織内の不満や愚痴に向かってしまうことは非常に残念なことです。

経営者の組織への悩みの深刻化

外部環境の変化が組織に課題をもたらし、現場や部署間、個々の職員の間で不安定な揺らぎが生まれています。現れる症状としては、現場の士気低下、リーダー不足、人材確保の難しさ、生産性の低下などが挙げられます。外部からの圧力や組織内の葛藤やストレスは目に見えない要因であり、これらの課題の原因を特定することは容易ではありません。経営者は従来のやり方だけでなく、組織全体の根本的な課題に対処するための新しい視点が求められています。

組織改革の鍵は何か?

この負の循環を断ち切るためには、一筋縄ではいかない挑戦が必要です。組織を活性化させるための鍵は、「人材が活かされる組織」を築くことにあります。従来のマネジメントでは部署や人材を機能として捉えがちですが、組織全体が熱意をもって働ける環境を整備することが重要です。

病院トップの新たな視点

これから病院トップが重要視すべきなのは、「職員が当院で働くことに充実感と成長を感じられる環境づくり」です。これを実現するには、組織マネジメントのアプローチを根本的に見直し、部署や人材が情熱をもって働ける場に変革していく必要があります。そのためには、トップと幹部の連携、経営へのコミットメント、管理職の挑戦意識やリーダーシップ、情報の透明性、ビジョンやミッションの共有など、見えない領域に焦点を当てたアクションが必要です。つまり、新しい組織文化の構築です。

組織の挑戦と変革

組織改革は制度だけでなく、文化やリーダーシップの変革も含みます。これには、トップ層が新しい視点で現状を見つめ、変化をリードする決意が求められます。トップ層は組織内の課題に直面するだけでなく、現場との共感を深め、協力関係を構築するために努力するべきです。これにより、組織全体が柔軟に変化に対応し、成長の土台を築くことができます。過去の成功体験にとらわれず、未来志向で組織を導き、持続可能な成功に向けた変革を進めるべきです。

持続可能な組織の構築

組織改革の究極の目標は、持続可能な組織の構築です。これには、組織全体のビジョンの明確化と共有、効果的なコミュニケーション、リーダーシップの発展、そして個々のメンバーの成長支援が不可欠です。持続可能な組織は変化に対応し、柔軟性を持ち、仲間意識とやりがいを提供します。経営者はこれらの要素を組織改革を通じて培い、将来にわたって組織の成功を確立するための基盤を築くべきです。

これらの視点を踏まえ、提案するのは、病院経営者が組織改革を手続きだけでなく、文化や働く環境の変革として捉え、持続可能な成功に向けた取り組みを継続的に進めていくことです。

病院幹部のための組織開発講座 第13弾
未来への一歩 2024年度からの新たな組織づくりを展望する』

組織開発というアプローチ

本稿の執筆者

江畑直樹(えばた なおき)
株式会社ミライバ 取締役

2003年日本経営入社。主に医療機関、福祉施設の組織創りや幹部・管理職・監督職の研修に従事。2018年に株式会社ミライバを設立し、組織開発コンサルティングや人材開発研修の支援を行う。成人発達理論、学習する組織、U理論、インテグラル理論、NVC等の理論をベースとし、首都大学東京専門職大学院や日本社会事業大学専門職大学院では、これら理論を軸とした組織創りやサービス開発等について看護管理者、福祉管理者を対象に授業を行う。

株式会社ミライバ/株式会社日本経営

本稿は掲載時点の情報に基づき、一般的なコメントを述べたものです。実際の経営の判断は個別具体的に検討する必要がありますので、専門家にご相談の上ご判断ください。本稿をもとに意思決定され、直接又は間接に損害を蒙られたとしても、一切の責任は負いかねます。

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